2010年5月16日日曜日

ドラッガーの先見の明から社会と経済の変革を学ぶ

ピーター・F・ドラッガーは組織マネジメントの重要性を世に広めた経営学者であり、社会の変化を優れた洞察力によって分析していた偉大な社会学者でもあります。

ネクスト・ソサエティが出版されたのは2002年ですが、8年前とは思えないほど的確に社会の変化を捕らえていて学ぶところが多い。

【ネクスト・ソサエティ――歴史が見たことのない未来がはじまる】
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第Ⅰ部 迫りくるネクスト・ソサエティ

第1章 ネクスト・ソサエティの姿
ニューエコノミーよりもネクスト・ソサエティ
雇用形態の変化
市場の変化
高度の競争社会
主役の交代
保護主義の復活
グローバル企業の未来像

第2章 社会を変える少子高齢化
急速に進行する少子高齢化
移民は必要かつ不要
優位に立つアメリカ
文化と市場の多様化
労働市場の多様化
人口の変化に気をつけよ

第3章 雇用の変貌
製造業労働者の減少
増大する知識労働者
女性の活躍
新種の知識労働者-テクノロジスト
知識労働者の自己規定
さらによりよい人生を
成功の代償

第4章 製造業のジレンマ
製造業の相対的地位の変化
雇用の減少と社会不安
日本は?
途上国の道
新種の保護主義
保護は有効か

第5章 企業のかたちが変わる
近代企業についての五つのパラダイム
パラダイムの変化
秩序の崩壊
近代企業のコンセプトの変化
多様な人間組織
意欲の源泉
企業体から連合体へ
トヨタ生産方式の展開
新たなビジネスモデル

第6章 トップマネジメントが変わる
トップマネジメントの責任
トップマネジメントの仕事
トップマネジメントの危機
新たなコンセプト
組織としての個の確立

第7章 ネクストソサエティに備えて
未来組織のあり方
人事管理が変わる
外部の情報
チェンジ・エージェントたれ
未来は予測しがたい方向に変化する
新たな制度と理念の誕生



第Ⅱ部 IT社会のゆくえ

第1章 IT革命の先に何があるか?
eコマースが世界を変える
蒸気機関の役割
世界観を変えた鉄道
プロセスのルーティン化
eコマースがもたらす革命
何が乗るかわからない
起爆に続く爆発
国民国家を生んだ印刷革命
IT革命が生む新技術・新産業
テクノロジストの出現
知識労働者は金では動かない

第2章 爆発するインターネットの世界
知識労働者の動機づけ
知識労働の成果の評価
IT革命と医療制度改革
eラーニングによる教育
医療は奥義か
少子化の影響
製造業の変身
新種の保護主義

第3章 コンピュータ・リテラシーから情報リテラシーへ
コンピュータ・リテラシーは当たり前
情報の使い手は誰か
情報中心の組織
必要な情報が手に入らない情報システム
市場の情報
技術の情報
不十分な情報
分離したままの会計システムとデータ処理システム
不可欠の情報リテラシー
ノンカスタマーの情報
価値ある朝鮮

第4章 eコマースは企業活動をどう変えるか?
配達が差別化の武器
eコマースによる自動車販売
生産と販売の分離

第5章 ニューエコノミー、いまだ到来せず
ネット企業のキャッシュフロー
マルチブランドへの道
継続教育が成長分野
予期せぬ市場
分割による再生
社会が主役になる
短期と長期のバランス
変化を観察する
eコマースのインパクト

第6章 明日のトップが果たすべき五つの課題
CEOの直面する問題
コーポレート・ガバナンスの変容
情報への新しい取り組み
命令はできない
知識労働者の興隆
ともに働く

第Ⅲ部 ビジネス・チャンス

第1章 企業家とイノベーション
企業家精神ナンバーワンの国
第一のわな-成功の拒否
第二のわな-利益思考
第三のわな-マネジメントチームの欠如
第四のわな-自らの役割の喪失
大企業に企業家精神は可能か
社会問題への取り組み
NPOの発展
政府における企業家精神

第2章 人こそビジネスの源泉
二つの成長産業-人材派遣業と雇用業務代行業
新種の従業員
規制に締め付けられて
時間と手間
分化する組織
適材適所
目が届かない
競争力の源泉
知識労働者は資本である
雑務からの開放
人こそビジネスの源泉

第3章 金融サービス業の危機とチャンス
シティの再興
知識センターとしてのシティ
金融サービス業が生まれ変わった
新たなイノベーションが急務
自己勘定取引のギャンブル化
唯一のチャンスは日本市場
まがいもののイノベーション-デリバティブ
金融サービス商品の市況品化
とるべき道は三つしかない
中高年中流階層に着目せよ
財務代行業務の開拓
為替保険の商品化
まだ間に合う

第4章 資本主義を超えて
資本主義の間違い
市場経済理論の欠陥
資本家の退場
政府とNPO
NPOのベスト・プラクティス
公僕がNPOを破壊する
アジアの社会不安
十九世紀国家の日本
中国の三つの道
二十一世紀最大の不安定化要因

第ⅢⅣ部 社会か、経済か

第1章 社会の一体性をいかにして回復するか?
甲冑の騎士
土地の支配
多元主義を生き返らせた近代企業
組織の自立性と社会の利益

第2章 対峙するグローバル経済と国家
国民国家のしぶとさ
漂流する国民国家
バーチャルな通貨
通貨財政政策の健全性の回復
貿易をめぐる因果関係が変わった
レートと関係のない貿易
新しい理論と政策
グローバル企業の出現
アメリカの抵抗
変更を余儀なくされる戦争のコンセプト
グローバルな期間の役割
常に勝利してきた国民国家

第3章 大事なのは社会だ-日本の先送り戦略の意図
日本についての五つの謬説
正しい仮説
天下り問題
官僚の力
エリート指導層の耐久力
民主主義化の指導層
代わるべきもの
先送り戦略の成功
行動の失敗
金融機関の傷
崩壊の危機にある社会契約
系列に代わるのも
大事なのは社会だ

第4章 NPOが都市コミュニティーをもたらす
都市社会のゆくえ
田舎社会の現実
都市社会への夢想
都市社会のコミュニティ
職場コミュニティの限界
NPOが答え

印象に残ったのは4点。

大資本は一部の億万長者から数千万の中流層へ移動した。
ビルゲイツ=億万長者のイメージが先行すると思いますが、フォーブスでトップを飾る億万長者でさえアメリカ経済に必要な資金の1日分しかまかなえないと著しています。
現代のマネーマーケットを観察すると、年金基金や投資信託などの機関投資家が資金を動かしていますが、その資金供給者はサラリーマンなどの中流層です。
一般の中流層→年金基金、投資信託→ヘッジファンド
という金の流れを追えば、既に大資本の供給者は数千万という一般の人々に移動しているというのも頷ける話です。

知識労働者は資本である。
前提条件が変われば資本にも負債にもなるのではないでしょうか。
ナレッジワーカーにとって知識は資本ですが、技術革新によって陳腐化する速度もはやい。
外部環境の変化にともなうビジネスチャンスを捉えて使える知識こそが資本だと思います。

命令や管理の時代は終わった。
本著でも現代は情報や技術が高度化・複雑化し、1つの組織で全てのリソースをまかなうのは不可能と言っている。
外部との連携がなければ事業を行うことが出来なくなっている今、協力や価値観の共有によって事業を推進していく必要があるということでしょう。
これは組織の内外に言えることだと思います。
もし組織の内部に命令や管理をされなければ動けない人がマジョリティな組織があるとすれば、それはシステムの問題ではなく採用の問題であるというのはビジョナリーカンパニーに記されています。

IT革命によって生まれる新産業はIT、コンピュータ、データ処理、インターネット関連以外の分野である。
職業柄、ウェブ関連の技術にばかり気をとられていましたが、インターネットという非独占的な流通システムによってもたらされるのはそれ以外の産業の創造的な破壊であるという。
すでに始まっている電子書籍産業や音楽業界の変化、今後期待される遠隔医療、DNAを解析して個々人に最適化されたメディカルサービス、非効率な教育システムに変革を迫るeラーニング、個人に的確なリスクヘッジや資産運用を提供する金融サービスなど。
現時点では、ソーシャルアプリやソーシャルサービスが話題になっているけど本当の革命はウェブを介して提供されるリアルなサービスにあるということか。

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