2009年8月23日日曜日

とある個人投資家

とある中年サラリーマンが将来を案じて資産運用をはじめようとしている。しかしこのサラリーマンはこれまで金融について一度も勉強したことがなく仕事と浪費をくり返して過ごしてきた。そこで彼は投資家兼事業家として活躍している幼なじみに相談を持ちかけた。


中年サラリーマン
「やあ。最近どう?調子は。」

投資家
「おお。これはめずらしい人が来た。ぼちぼちかな。君のほうはどうなの?」


中年サラリーマン
「うん。ぼちぼち。今日は相談があって来たんだけど、これから資産運用を始めようかと思ってるんだけど君の意見が聞きたくてさ。」


投資家
「そう。で、何に投資しようとしてるの?」

中年サラリーマン
「まだ決めてないんだ。CMでやってる個人向け国債と株式とファンドぐらいしか聞いたことがないから」

投資家
「じゃあ実際に投資を始める前に時間をとって知識を得ることに投資したほうがいいね。今の君が投資を始めてもマーケットからいい鴨にされるだけだよ。」

中年サラリーマン
「その時間がないから君に相談したんだけど。」

投資家
「投資っていうのは他人の意見を鵜呑みにしちゃいけないゲームなんだよ。実際にどれぐらいの利益が見込めてどんなリスクがあるのかを自分の頭で考えて見極められない人は最初から負けが決まっているゲームをすることになる。」

中年サラリーマン
「じゃあフィナンシャルプランナーとか専門家はテキトウなこといっているってこと?」

投資家
「そうは言ってないよ。ただ、彼らのなかに身銭をきって投資している人は少ない。意見や考えは言うけど実際に投資はしない人の話を聞くべきだと思う?著名な投資家にウォーレンバフェットという人がいるんだけど彼はskin in the game(スキン・イン・ザ・ゲーム)と言ってる。投資は痛みが伴うゲームだと。」

中年サラリーマン
「ただ俺は投資がしたくて君に相談したんだけど、投資をするなと言われているようで参考にならないな」

投資家
「投資をするなと言いたいんじゃなくて、無知がもたらす弊害は大きいと言いたいんだ。君を守るのは私の意見でも専門家の意見でもなく君自身の思考プロセスにある。適切な判断は現実を理解する知識がなければできないんだよ。」

中年サラリーマン
「あぁ。わかった。また何かあったら相談するよ。」

中年サラリーマンは投資家の意見には耳を貸さず、自分にとって都合の良い投資対象をもとめて証券会社の窓口に向かった。

中年サラリーマン
「資産の目減リスクが低い投資対象ってなにかありますか?」

窓口担当者
「それなら個人向け国債はいかがでしょう。国が発行している債券ですから安心です。」

中年サラリーマン
「そう。国が発行元なら安心だね。じゃあそれを買おうかな」

しかし彼は知らなかった。国債が自分の払っている税金から返済されていることを。そして国債から受け取れる金利からも税金をとられていることを。

中年サラリーマン
「あと、もう少し利回りのいいものも欲しいな。株式とファンドってどっちがリスクが高いの?」

窓口担当者
「一般的には株式のほうがリスクは高いと言われています。ファンドでしたら株式よりもリスクが低いですので当方ではこちらの商品をご提案させていただいております。」

窓口担当者がパンフレットを取り出す。

中年サラリーマン
「へぇー。利回り2%かぁ。国債の倍ありますね。じゃあそれも買います。」

しかし彼は知らなかった。そのファンドが株式に分散投資されるもので、投資判断を1人のファンドマネージャーが行っている事を。結局自分の資産を他人に運用してもらっているだけである事を。そしてファンドの利益が出ても大半は手数料で取られてしまうことを。

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